レッド・コーデックスは、2026年の第二四半期に実施されたオリオン・アノマリーシーズンの中のイベントです。
イベントを通して24個のメディアが提供され、そのメディアの中ではひとつの物語が紡がれていました。
このページでは、その物語を読み解きます。
1930年代、ある姉妹がアメリカのニューメキシコ州にある牧場に住んでいた。
姉であるアグネスは、謎の印のようなイメージを「視る」力を発現し、妹のベラとともにその印を象った建造物を実際に制作しはじめた。
その過程と結末はスケッチブックと手記の束、そして未開封の封筒に収められた手紙として残されていて、現代では何物かも分からない遺品としてオークションに出されていた。
その遺品を入手した者が、内容の解明を願い、シャポーに遺品を送付してきた。
シャポーは太古の印章に詳しいハンクの協力を得て、この遺品の手記を読み解いていった・・・。
この物語の概要と結末を、以下の折りたたまれた文章にまとめました。いわゆるネタバレです。
レッド・コーデックスの全体を堪能したい方は、以下の文章タイトル「0. 物語の概要と結末」をタップせず、さらに下の「各メディアの内容詳細」を読み解いていってください。
手記によると、二人の姉妹、アグネスとベラは、姉のアグネスが「視た」イメージを、木造の建造物として製作する作業を続けていった。
アグネスのイメージはスケッチブックに描き出され、そしてその絵画を妹のベラが計測・計算し、建造物として作ることを可能とした。
当初は建造物の製作が進むにつれ、二人の期待と喜びが高まっていった。
しかし、アグネスの描き出すイメージは、繰り返し描かれるうちに段々と構造上不可解な隙間を持つようになっていった。
ベラはそのことをアグネスに指摘しようと考えたが、あまりにもアグネスにはその隙間を描くことに躊躇と迷いが無く、強い確信があるように見えた。
その取り付かれたような姉の様子を見て、ベラは段々と建造物そのものを恐れるようになっていった。
一方アグネスは、その建造物を完成させることで全てが上手く行く、そしてそれは自らの意志ではなく、自分を「通って」具現化していっているだけだと強く信じるようになった。
段々と二人の間の軋轢の芽は成長し、目に見えない形で取り返しのつかないほどに膨らんでしまった。
ベラはついに、建造物の完成を不可能にする決定的な一か所を切り出すことで、建造物を破壊たらしめた。
その後、アグネスは失意のまま、彼女たちの住まいであった牧場を離れていった。
互いの手記には、互いを強く家族として愛し、絆を信じる気持ちが綴られていたにも関わらず・・・。
スケッチブックと手記の他に有った2通の未開封の封筒は、二人が互いに宛てて残した手紙だ。
しかし、その手紙が相手に読まれることは無かった。
シャポーとハンクは、この手記を読み進めていくにつれ、その物語に熱中し、続きを知ることに強くのめりこんでいった。
しかし、その手記に書かれた悲劇的な結末を目の当たりにして、ある種の悲壮感を得てしまった。
そして、最後に残された2通の封筒を開封し、手紙を読むか否かを逡巡するに至った。
真実を追い求めるシャポーは開封することを主張するが、ハンクは異なる考えを示した。
開けずに残しておくこと、それこそが、この姉妹を尊重し、敬意を示す方法に他ならないと。
その言い方には、興味のままに開封して、中の手紙を読み貪ることは「唯一の正解」とは思えないという思いを言外に含めていた。
二人は、2通の封筒を開封しないことに決めた。
各メディアの内容を、折りたたまれた文章にまとめました。気になる個所のタイトルをタップして開いて読んでみてください。文章の後には原典の画像を掲載しています。
シャポー:
見知らぬ人から、見知らぬ箱が郵送されてきた。
差出人の名前はなく、返送先にはニューメキシコ州の、私が二度見しなければ見つけられなかったほど小さな町の名前だけが記されていた。
そして同封されていた一枚のメモには、こう書かれていた。
「これは私のものというより、あなたたちのものだと思います。」
箱の中には、誰かの遺品とみられる古いものが入っていた。
折りたたまれた手紙、端が擦り切れて柔らかくなったばらばらの紙。
そしてその中心には、分厚いスケッチブックがあった。
何年にもわたって描かれたと思われるスケッチ。そのすべてが、一組の姉妹の筆跡で描かれているようだ。
しかも、なにも意味のないものを描いていたわけではないとみられる。
姉妹の二人で共に作り上げた、とあるものを描いていた。
ある姉妹が生きた人生そのものが、一つの遺品として売られ、その中身は一度散逸し、そしてその後見知らぬ誰かが収集して箱に詰めた。
その遺品は収集された順番のまま箱に詰められ、今は私の机の上に置かれている。
私は普段、このようなものを調査するにしても、自分一人で取り組んできた。
だが今回は違う。
この資料には、誰かの手で残された痕跡があまりにも多く含まれている。
そして古い痕跡を読むことは、私ではなくハンクが得意とするところだ。
だから今回は、私とハンクの二人で調査に取り組むことにした。
調査の内容を書き留めるにあたって、それぞれ署名を入れていくので、調査書の中で誰が話している部分であるのかは常に分かるようにして記していく。
そして私たちは、この資料を公開の場で読み解いていく。
いつもと同じように、一度に少しずつ、私たち自身が責任を持てる順序で。
内容に確信が持てるまでは、何も公開しない。
なお、資料の中には、全体を通して繰り返し現れる「ある形」がある。
最初にそれに気づいたのは、この箱を見つけた人だった。
その人は、一目見て自分たちにも分かる何かに見えたと言っていた。
そして実際、それは何か別のものと響き合っている。
私もそう感じた。
だが、その「何か」そのものについては、まだほとんど分かっていない。
そこに本当に何かがあるのかどうか――それこそが問いなのだとすれば、私は早々に答えを決めつけるより、あらゆる可能性を残したままにしておきたい。
だから、ぜひあなたも一緒に読んでほしい。
あなたが見えるものを、私たちに教えてほしい。
私たちだけでは、この資料のすべてを解明することはできない。
このようなものは、誰一人として全体を見通せるものではない。
そのことを後になって取り繕うより、最初から認めておきたい。
ハンク:
シャポーの言う通り、これは何か別のものと響き合っている。
ただ私は、その「何か」が一体何なのかを確信することについては慎重でいたい。
私は長い年月、人々が「自分は確かに何かを見ている」と信じて残した痕跡を見続けてきた。
壁龕(へきがん)、運河の石壁、今では誰にも読み解けなってしまった岩に刻まれた印。
これらのいずれの場合でも、描いた「手」は、描かれた対象そのものよりも、ほとんどいつも確信に満ちている。
今のところ、この資料から私が受ける印象もまさにそれだ。
非常に確信に満ちた手。
ただ、その確信が何に向けられていたのかは、まだ分からない。
だから私も、この調査に加わろう。
ただし、ゆっくりと進めよう。
手紙:
こんにちは。
こんなものを突然送ってしまってすみません。
あなたたちの書いた記事を以前から読んでいました。
この資料を送ることを、4回くらい思いとどまりました。
だから、もしこの資料が意味のない何でもないものだったら、そのまま捨ててください。気にしません。
要点だけ記します。
私は時々、誰のものとも言えぬ遺品整理品を買いつけています。どれも小さなものばかりです。遺品競売会社でも処分しきれないようなものですね。
去年の春、ニューメキシコ州のある遺品整理品に含まれる小さな箱を一つ手に入れました。誰にも引き取られなかった箱でした。
中身はだいたい想像どおりでした。
一冊のスケッチブックと、ばらばらになった紙、それに手紙の束が入っていました。
そのスケッチの一枚に、私が目を止めた「ある形」が描かれていました。
私は何度もそのスケッチを見直してしまいました。
それは、あなたたち二人の記事の中に書かれている「あの種のもの」を思い出させたのです。
うまく言えるのはそれくらいです。
私は専門家ではありません。
自分の直感が正しいのかどうかも分かりません。
ただ、この箱は何か意味があるもののように思えました。
そして、この箱をこのまま闇に葬るべきではないと感じました。
中身は全部送ります。
出所が分かるように、箱を手に入れた時のオークションの記録も一緒に入れてあります。
正直に言うと、資料の中身は全部はそろっていません。
オークションの記録にもそう書かれていますし、私が手に入れる前のどこかで水に濡れた形跡もあります。
そろってもいないものを送るのは少し気が引けました。
でも、私の手元で眠らせておくより、欠けたままでもあなたたちに渡した方がいいと思いました。
手紙も二通入っていましたが、まだ封がされたままです。
私は開けませんでした。
それは私が開けるものではないと思ったからです。
以上です。
この箱が何か意味のあるものかどうかは、私よりあなたたちの方が判断できるでしょう。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
オークション記録:
ニューメキシコ州 アルマグレ郡
ロット番号 47-B
区画 T19N R11E Section 14
分類 引き取り手のない物品・委託品
販売日 2026年4月14日
出所/遺産名 ブランドー家 家財一式(セロ・マンソ地域)
回収場所 セロ・マンソ地域周辺の住宅
内容物(内訳なし、一括販売)
1冊:厚表紙のスケッチブック … 全ページにわたりスケッチあり、約40ページ
1束:ばら紙・書簡類・その他雑多な書類
2通:手紙(未開封)
1式:木材 … 加工済みの構造材。敷地内にあった解体済み建造物の部材(一部切断あり。状態欄参照)
1式:家庭用書類・雑品
「現状渡し(SOLD AS FOUND)」
状態・備考
内容物は全て揃ってはいない。
書類の一部に水濡れによる損傷あり。
元の目録に記載されていた品の一部は販売時には存在せず、所在不明。
内容物の完全性について保証なし。
現状のまま販売。
内容物の鑑定は実施せず。
評価対象は紙類としての価値のみ。
(絵のみ、文章無し)
スケッチブックとともにあった書類の束には、ある姉妹の手記が含まれていた――
ベラ:
姉さんが眠っている間、また本を手にしていた。
手放すことができなかった。
線は一度も途切れず、重みは均等なまま――どうしてだろう。
彼女は立ち止まって確かめたりもしないのに、それでもちゃんとひとつの形になる。
同じ形が何度も出てくる。
そのたびに、ほんの少しだけ先へ進んでいる。
写し取ったものではない――辿り着いたものだ。
どこかへ向かっている。
朝になったら、姉さんに尋ねてみよう。
その形をどうやって知りえたのか。
姉さんはうまく説明できないだろう。
ただ、「分かって」いるのだ。
愛しい、そして奇妙な人。
私はその人の手を、一晩中眺めていられる。
シャポー:
その絵は、もうただの絵には見えなくなった。
もっと探求されるべきものと思えるようになった。
繰り返し現れるその形が、自ら進んで現れてきているように感じられる。
その形をしたものは、現存物として残されているものではない。
ただ、この資料の記述によると、一度製作されていたようだ。
この資料の中では、ただの線だと思っていたものが徐々に形を整え始め、余白に数字が現れ、絵として形を成していった。
それまで「見られていたもの」である絵が、今度は「作られるもの」になり、姉妹二人はそれを実際に組み立て始めていった。
当初予定していなかったことを、ひとつ言っておこう。
私はもう、この手記を読むことをやめて、距離を置くようにしている。
私はこの手記が好きなので、まさか自分でもそのようになるとは思っていなかった。
さて、ここからが私が伏せていた部分について述べよう。
スケッチブックのページを通して繰り返し現れる、あの形――何かと「似ている」としか思えないようにしていたものについてだ。
正直に言おう。
私が口にするより前に、この報告書を読むほとんどの人は想像していただろう。
あれはグリフではない。
知りうるあらゆるグリフと照合してみたが、何ひとつ一致しない。
また、どこをどう探しても、この絵は他の文献には出てこない。
1930年代の牧場に住む女性が描いたものを、ただのあたかも魔術めいた記号にすぎないと言うつもりもない。
だが、だからといって、それが魔術的な記号とは無縁だというわけでもない。
それは同じベースの上に作られていて、私たちのグリフと同一の線上にあるものとして描かれている。
その「線」が何なのか――それを語るのは私ではなく、ハンクの仕事だ。
それが何のためのものなのか、とあるものを指し示すものなのか、あるいは別のものなのか――私には分からないし、何かとの類似性だけから答えが得られるわけでもない。
あなたには何が見える?
私よりも先まで見えるはずだ。
ハンクは魔術的な記号について詳しいので、今回は彼に任せよう。
ハンク:
1933年に描かれたこのような「印」を見ても、思ったより動揺しなかった。
私はこれよりはるかに古い印と、30年間も付き合ってきた――岩に刻まれたもの、洞窟の壁に引っかかれたもの、生きている人間には誰にも読み返せないような、壁龕の中に残された印などのように。
そういうものは、本来なら知るはずもない人間の手の中から突然現れるものだ。
互いにつながるはずのない、途方もなく隔たった時代をまたいで。
珍しいことではある。だが、首筋の毛が逆立つような類いのものじゃない。
牧場に住む女性が太古から存在する印を自ら描いた――それくらいなら、私は受け入れられる。
だが、今回はそれだけは納得できない。
これは単に古いというだけじゃない。
今の私たちがこうしたものを分類するやり方――ひとつの意味を、その正反対の意味と真正面から対置し、その違いのすべてを一本の線に背負わせるやり方――で分類してみると、この印は比較的新しい時代のものだ。
私たちが生きているこの時代のものだ。
むしろ、彼女の描いた印こそが、その分類法でいうところの、一本の線そのものであると言える。
すなわち、あるものと、その完全な正反対のもの、もしくは「真実」と「嘘」を描く方法である。
彼女はその二者を区別する境界、そのものを描いている。
誰かが何十年も後になって名付けるはずだった分類法を、まるで彼女がすでに辞書を開いて知っていたかのように描いている。
古代の印の上に、新しい印がそんなふうに重なっているような事例は見つかったことがない。
少なくとも、実際の発掘現場では、そんなもの見たことはない。
そして彼女は、その境界を確定しないでいる。
境界に近づき、そこで止まる。
境界を定めてしまえば、一方は、ひとつの意味を成し、もう一方は、正反対の意味になるものだ。
それなのに彼女は、そのちょうど境界の上に印を置いている。
それまるで、そこには「選ばない」という選択肢があることを知っていたかのようだ。
確かな手つきで、確かなものを作っている。
比率は正確だ。接合部分もきちんと考えられている。
私は、あるものがどう組み上がっているかなら、それが何のためにあるのかを理解するよりずっと前に読み取ることができる。
そして今の私は、「どうやって」印を組み上げたかは分かっている。
だが、「なぜ」そんなものを組み上げたのかは分からない。
「なぜ」に対して私がたどり着ける一番近い答えはこうだ。
これは、何かを運ぶために作られた。
彼女が見たものを、自分自身よりも先へ届けるために――彼女自身の人生さえも越えて。
これは私がなにか警報を鳴らしているという話じゃない。
ただ、彼女が運ぼうとしたものは何なのか、それがまだ問いとして残っている、という話なんだ。
なかなか見事な計画だ。
その続きを知りたい。
(文章無し、絵のみ)
ベラ:
ここに書くのは三週間ぶりだ。なぜ書かなかったのか、自分でもはっきり分かっている。一日の終わりに、書くために残っているものが何もなかったからだ。
私たちは、それを作っている。
後になって、それが完成して当たり前のものになり、その制作の中にいた頃がどんなものだったのかを忘れてしまったときのために、今のうちにありのまま書き留めておこうと思う。
アグネス姉さんが描き、私はその絵を構造として読み解いて姉さんに返す、ということを繰り返している。
――荷重がどこへ流れるのか、何が支えになり、何が支えているように見えるだけなのか、紙の上では美しい線が、紙から立体として離れたときにはなぜ成り立たないのか。
姉さんはそれを嫌がらない。
私は、少しは嫌がるだろうと思っていた。
姉さんは私に紙を渡して、待つ。
まるで、自分でも半分は分かっていることを、誰かに言葉にしてもらうのを待っているように。
そして私がそこにある問題を見つけると、姉さんは喜ぶ。
それは私が予想していなかったことで、なぜそうなのか、うまく説明することもできない。
これまでで、私たちはいちばん近いところで一緒に作業している。
私たちは、ひとつの優れた頭脳を二つに分けたようなものなのではないか――そんなことを何度も考えてしまう。
そして、そんな考えを自分がこれほど気に入っていることに、少し気恥ずかしささえ覚える。
そして、それは問題でもある――本物の問題だ。
私がこれまで与えられた中で、最高の問題だ。
彼女が思いつく一つ一つの接合部が、その下にある一つ一つの接合部に問いを投げかけている。
補強構造だけに一年を費やしたとしても、私はその一年を幸せに過ごせるだろう。
今なら、姉さんにとってそれがどういうものなのか、少し分かる。
「見ること」そのものじゃない――私は決して姉さんのようには見られない。
そうではなく、次の部品がすぐそこにあって、「ここにある」と問いかけてくるから、もう止まることができない、その感覚だ。
それは私にも作用している。姉さんにとってそれが光を通して働くように、私には算術を通して働いている。
それはどこかへ向かっている。私は、それが到着するとき、そこにいたい。
こんな文章を自分がいつか書くとは思っていなかった。そして今は、裏付ける数字がひとつもなくても、本気でそう思っている。
小さなことをひとつだけ書いて、それから寝よう。
今夜、完成した形をいちばん初期のページと照らし合わせた。私は何でもそうやって確認するのだが、比率が、最初の頃からほんの少しずれている。
中心が、初期のページから後半のページにかけて、髪の毛一本ほどだけ移動している。
それは何も問題ではない。
手は描き進めるにつれて、より本当の線を見つけていく。
私の手もそうだし、彼女の手もそうだ。どんな手だってそうだ。
そして三年かけて作られている絵なら、進みながら少しずつ落ち着いていくものだ。
私が気づいたのは、気づくことこそが自分の役目だからだ。
たぶん、何も問題ではない。
姉さんをこれで煩わせるつもりはない。
今夜の私はあまりにも幸せだから、ほんのわずかなずれを追いかけて、穴の奥まで掘り進むようなことはしたくない。
明日は下側のフレームを組み上げなければならないし、そのためにはちゃんと休んでおきたい。
よし。
寝よう。
LERRO MANSO ― 作業用シート
正確に欠けることなく記録し続けること。
太い木材(4×4相当) ― 状態の良いものが7本。2本は両端を確認済み。割れ目を避けて切断する。
細い木材 ― 11本、種類は混在。4本は古い囲いから回収したもの。鉋をかければ十分使える。
外装板/覆うためのシート ― 不足。設計で必要としている量のおよそ半分しかない。
釘、金具、長ボルト ― 問題はボルト。残り6本。内側のリングには約20本必要。
土曜日に材木置き場で確認する。先月と同じ値段なら、購入せずに別の方法で調達する。
ベイ1、ベイ2 ― 建て上げ済み、筋交い固定済み、正確に調整済み。
ベイ3 ― 下側の筋交いをやり直した。2回目の調整で、1/8インチ以内の誤差に収まった。
ベイ4 ― 枠組みは完成しているが、まだ建て上げていない。ボルト待ち。
床側のリング ― 設置済み。シムで水平を調整し、2回確認した。
ベイ5~7
(ここは内側に近い部分。短い部材で、それぞれ角度が違う。同じ切断になるものは一つもない)
上側のリング
すべての下側の筋交いを取り付け、固定が完全に固まるまでは絶対に持ち上げないこと。少なくとも2日。
中央部分
最後に行う。残りの構造だけで自立できるようになるまでは、ここに何も接続しない。
※これらは規格寸法ではない。毎回、図面を基準に水平を出すこと。目測で切らない。
a ― 31と3/8インチ。左側を水平に。両端とも同じ。
b ― 29と7/8インチ → 28と7/8インチに切り直し。図面上で見えるよりも、実際の走り込みが早い。
c ― 27と3/4インチ。片端は右側を水平に、もう片端は左側を水平にする。
(間違いではない。A.の線がこのねじれを要求している)
d、e、f ― このシートではなく、実際に建て上がっている構造物から寸法を取る。それぞれ前のものより短くなる。
すべて同じ一点へ向かっている。構造のどの部分も他のものに対して直角ではないのに、それでも正しく収まる――実際にそうなることは確認した。
この形が何という名前なのか、私は知らない。そして、もう名前をつけようとするのはやめた。
切断が正しいのか、それとも間違っているのか。そのことなら私には答えられる。
ベラ:
いや――筋交いは左ではなく、右側の脚から外れる形にしたがっている。
そこをずらせば、ベイ全体がそれだけで荷重を支えられる。
明日、姉さんに見せる。
姉さんは、私が手を入れる前から半分は正しくできていた。
いつもそうだ。
姉さんは物事のコツをつかんでしまう。そして、計算の部分だけを私に残す――二つの半分が揃って、今は一枚の良い図面になった。
ただ、ここは違う――中央へ向かって伸びている線が、接続する手前で止まっている。
姉さんは中央を開けたままにしている。
他の線はすべてきれいに閉じているのに、これだけは途中で止めている。
手が滑ったわけではない。姉さんの手は滑らない。
姉さんは意図的に開けている。
まだ、それが図面を洗練させているのか、それとも何かを表現しているのかは分からない。
姉さんに聞こう――いや、すぐには聞かないでおこう。
まず観察して、それから聞く。
私が言葉にしてしまう前に、姉さんがもう一度同じやり方をするか見てみたい。
これが今の私たちの形だ。
私が荷重を与え、姉さんが光を与えた。
そして、どちらか一人だけでは、このものを作ることはできなかった。
シャポー:
この手記は、仲たがいが起こる前に、すでにその仲たがいを描いていた。
ここは正確に言っておきたい。こういうことは、遠回しに話すと輪郭がぼやけてしまうからだ。
二人が互いに背を向けること――それを描いたページのほうが先にあった。
疑念を記録する手紙よりも前に。ベラがそれを言葉に書き留めるよりも前に。
アグネスはページの上に亀裂を置いた。そして、そのあと現実にも亀裂が訪れた。
それが私にどれほどの影響を与えるか、正直に言おう。
たぶん、こんなに動揺するべきではないのだろう。
ばらばらだった事実の山が、実はひとつの出来事を指していたと分かること――私はそういうものに弱い。昔からずっと。
だから、最初の手記を読んでからずっと考え続けている問いをここに置く。
彼女はそれが起こるのを予見していたのか――それとも、描いたことが、それを起こす手助けをしてしまったのか?
私には分からない。 そして、分かったふりをするくらいなら、分からないままでここに座っていたい。
少なくとも、今ここにいられることを嬉しく思っている自分を否定するよりは、そのほうがいい。
ハンク:
手記の中身のほうが、アグネス自身がそこへ到達する前に、彼女が向かう先へ先回りしている。 それが私は好きではない。
意味のない土地を十分すぎるほど掘ってきたから、ある場所が「意味を持っている」ときの感覚は分かる――そして今がまさにその感覚だ。
シャポーと私がやっている仕事には、こういうものを表す言葉がある。
ひとつのものを通して何かを運び、ある人が見たものを、その人自身の先まで届けるために作られたもの。
でも、その言葉は口にしない。 声に出してしまうと、彼女が手を伸ばしていたものより、ずっと小さなものになってしまうからだ。
そして、これは以前から私が気にしていたあの形だ――彼女が決して閉じようとしなかった形。
「真実」にあと一本線が足りず、 「嘘」にもあと一本線が足りない。 真ん中だけが、意図的に開けられている。
二人がそれを現実に立ち上げようと近づけば近づくほど、それが何を意味するのかについて、二人の意見は激しく分かれていった。
一人はそれを「約束」だと読んだ。 もう一人は「警告」だと読んだ。
だが、その図面はどちらなのかを決して語らない。 私も語らない。
アグネスはそのパターンを見つけると、身を乗り出して近づいていく。 私はそれを見ると、一歩後ろへ下がりたくなる。
同じパターンを見ている。 だが、私たちはそこに同じ意味を見ているわけではない。
(画像のみ、文章無し)
ベラ:
これを書くのを一週間も先延ばしにしていた。理由は分かっている。そして、その「理由」にもう疲れた。書いてしまえば、それが現実になってしまうから。
だから。ありのままに。私が他のすべてをやるときと同じように、たとえそれを動かしただけでも、私は……
何かがおかしく感じ始めている。アグネス姉さんのことではない。
何より先に、これは書いておきたい。そうでなければ、逆の意味に受け取るのは簡単だし、それは間違いだからだ。これは姉さんのことではない。あの「もの」のことだ。
今朝また、完成形を初期のページと照らし合わせて測った。そして、中央部分はずっとずれ続けている。もう、ほんのわずかという程度ではない。
一方向に。
しかも、それは人の手がふらつくようにさまよった結果ではない。
そこに留まっている。
そこが私が……
私を怖がらせているのは、その「留まり方」だ。
間違いなら、ふらつくものだ。だが、これは留まっている。そして、留まるものはどこかへ向かっている。
良いところへ向かっているとは思えない。
今、この一文をここに書いた。そして、これは取り消さない。
私は間違っていたい。
本当に、間違っていたいと努力してきた――この文章を読む誰かに、そこだけは信じてほしい。
3年かけて作られてきた図面なら、進むにつれて形が落ち着いていくはずだ。どんな手でも、より正しい線を見つけていく。初期のページは粗く、目がそれを修正していく。
私は自分にそう言い聞かせた。
2回測った。そして3回目も測った。2回目の答えに耐えられなかったからだ。
そして3回目の答えは、2回目の答えと同じだった。
そして、このことを姉さんには言えない。
もし姉さんに言ったら、姉さんは……
姉さんに言おうとして、文章を書き始めたことが何度もある。でも、そのたびに書くのをやめた。
姉さんなら聞いてくれるだろう……
なぜなら、私が手を上げて止めたいと思っているもの――どこかへ向かっているということ――こそが、姉さんが待ち望んでいるものだからだ。
姉さんにとって、それは欠陥ではない。
それは、その作品自身が「生きている」と姉さんに告げていることになる。
私がそれを伝えたとき、姉さんが「荷重」を聞き取り、「裏切り」を聞かずに済むような形は存在しない。
だから、私は言わない。
ここに書く。ここなら、それは真実であっても、まだ私には何の代償もない。
そして、ランプをつけたままにしておく。姉さんには、私が以前と同じように、ただ夜遅くまで起きているだけだと思わせておく。
ここにさえ書き留めることのできなかった部分――
私が本当に恐れていること。あの「もの」が何をするのかということ――
私はずっと……
もう十分だ。
できるなら、寝よう。
明日、また測る。
違う結果になってくれたら、そのためなら私はどんなものでも差し出したい。
アグネス:
ビーへ――
また廊下の向こうにあるランプをつけっぱなしにしているの、気づいていたわ。
今のあなたは、その明かりと一緒に起きているのね。
私がまだ小さくて、暗闇が怖くて眠れなかった頃、あなたが私と一緒に起きていてくれた、あの頃と同じように。
そのことが、私は嬉しい。
でも、あなたは逆に考えているのよ、愛しい人――怖がっていないのは私のほう。
ページのことを気に病まないで。
あなたがあれに悩まされているのは分かっている。私も最初の何晩かは、同じように悩まされた。
私がそれを「作っている」のではなく、ただ通しているだけなのだと理解するまでは。
それは、ポンプの下に手を差し出して、水がどこへ流れていくのかを感じ取るようなもの。
水と争うことはできない。
濡れるか、後ろへ下がるか、そのどちらかしかない。
そして、濡れることの中に恐れるものなんて何もない――最初から、そんなものはなかった。
私は後ろへ下がっていない。そして、これからも下がるつもりはない。
あなたは、それが安全なのか確かめるために、何度もそれを分解しようとしている。
それが愛情から来ていることは分かっている。
でも、ビー、これは解決するためのものではない。
完成させるためのものなの。
全体がひとつになったとき、その違いが分かるわ。
描いているときは、私のところへ来て一緒に座って。
ただ座っていればいい。
図形や寸法を持ってこなくていい。ランプも持ってこなくていい――あなたの手を持ってきて。
私が感じているものを、あなたも感じることになる。
そうすれば、もうそれについて話す必要はなくなるわ。
あなたにも分かるから。私が分かっているのと同じように。
それができないなら――もうしばらくの間、それに背を向けていなければならないのなら――それでもいい。
あなたがまだ手放す準備のできていない恐怖を背負わせるくらいなら、残りの道は私一人で歩くわ。
それで私たちの間に何かが変わるわけではない。
もうほとんど完成している。そして、あなたもいずれ分かってくれる。
あなたはいつだって、本当のことのところへ戻ってくるもの。
怒ってなんかいないわ。
このことであなたに腹を立てるなんて、私には決してできない。
もう寝なさい。
ランプがあなたの助けになるなら、つけたままでいい――ただ知っておいて。
私は最近では、暗闇の中でもちゃんと眠れるから。
――A(アグネス).
ベラ:
それを確かめるために戻ってきた。もう確信している。
また、あの線の途切れ――ねえアグネス、中央へ向かって伸びているのに、そこまで届かずに止まっている、あの線。
私が尋ねたとき、あなたは何も言わなかった。そして、また同じことをした。
数えてみた。これで4回目だ。
同じ場所で線が途切れている。そして毎回、ページの上でそれらが互いに向きを変える、その直前に起きている。
4回だ。
これは、手が線を探しているということではない。
手が線を探しているなら、線はふらつく。
でも、これはふらつかない。待っている。そして、そのあとでそれらは向きを変える。
私はもう、「これは幾何学なのだ」と自分に言い聞かせるのをやめた。
これは幾何学ではない。いや、幾何学なのかもしれない。でも、それが目的ではない。
あなたは、まるで何でもないことのようにそれを描く。
私は測った。
何でもないものなんかじゃない。
これは、そのもの自体が、自分が何をするのかを私たちに示しているのだと思う。
それが何かをする前に、私たちに見せている。
そして、何より恐ろしいのは――私はそのすべてをあなたに説明できてしまうことだ。
すべての印、すべての向きの変化を並べて見せることができる。
それでも、あなたはきっと、それを今まで以上に愛するだけだろう。
あなたが理屈で入り込んだわけではないものから、理屈であなたを引き戻すことはできない。
私は5回目を待つつもりはない。
新聞記事の切り抜き:
郡内の話題
……郡の帳簿に記載されている滞納勘定のリストが、いつもの公告に従って今週掲示された。
リストは前の季節より少し長くなっており、乾燥した年の影響が、セロ・マソ道路沿いのほとんどの土地に及んでいる。……
……その方面の読者から、旧ブランド家の土地で行われている工事について尋ねる便りが届いた。
少し前から高台に建てられている木造の構造物が、何かと人目を引いているという。
分かっているのは、旧ブランド家に住まう姉妹は人付き合いをせず、この工事は彼女たち自身の問題だということだけだ。
近所の住民に尋ねたところ、その構造物について言えるのは、
「私たちが知っているどんな計画に基づいて建てられたものでもない」
という程度だそうで、それ以上は語らず話を終えた。……
……秋の親睦会は、また延期された。……
郡役所の建築・改修許可記録:
アルマグレ郡 ― 書記官事務所
建築・改修許可登録簿 ― セロ・マソ管区
区画(PARCEL)
T19N R11E セクション14
登録番号
274号
提出年月
1933年6月
申請者
ブランド ― セロ・マソ周辺の土地所有者
改修・建築物
離れ/木造構造物、私有地
処置
許可保留中 ― 料金が滞納されており、工事の測量図も要求されたが提出されていない。
書記官メモ
申請時点で料金未払い。申請者には通知済み。測量図の提出なし。
査定官の注記:許可取得前に、当該土地で改修工事が行われていた。案件を照会。
これ以上の記録上の処置なし。勘定は滞納状態のまま繰り越し。
書記官記入欄
料金 □ 測量 □ 完了 □
[滞納中 繰越]
シャポー:
スケッチブックのページはここで終わりだ。
遺物の箱そのものが終わるという意味じゃない――彼女たちの側の記録が終わるということだ。
図面はここで途切れている。
この先、この遺物の一式の中に何が残されていたとしても、それはもうあの姉妹が作っていた「あのもの」の続きではない。
それを作るという行為が、あの二人に何をもたらしたのか。
残っているのは、あと数枚の手記、壊れてしまった何か、そして誰も開封しなかった2通の封筒だ。
私が、それを知りたいという気持ちに傾いていないと言ったら嘘になる。
最初のページからずっと、これが最後にどうなるのかを知りたかった。
そして今なら、それを声に出して認めてもいいくらいのところまで来ている。
ハンク:
俺は、それを知りたいという気持ちに傾いているわけじゃない。
ここまで読めば、これが穏やかな結末を迎えないことくらい分かる。
急いで先へ進むより、今はしばらく、この結末のこちら側に座っていたい。
準備ができたら、先へ進めばいい。
(画像のみ、文章無し)
アグネス:
ビーへ――
今日、あなたは私の顔を見て、それを言った。そして私はそれ以来ずっと、その言葉を頭の中で転がしている――重みを量っているんじゃない、愛しい人。
私は、すでに見てしまったものの重みを量ることなんてできない。
でも、あなたが手の中で温かい石を転がしながら、それを置きたくないと思っている、その感じ。
あなたが私に尋ねていることは、私にとってはそういうものなの。
でも、あなたに頼まれたことを、私はできない。
今なら、その全体を見ている。
断片としてではなく、最初に現れたときのような形でもなく――そのすべてを。
顔がこちらを向いた瞬間に、その顔が誰なのか分かるように。
それは私のところへ来た。ビー。
私のところへ。
それを拒む権利は私にはない。朝を拒めないのと同じくらいに。
そして、今日あなたが言ったことは「止めて」じゃなかった――「怖い」だった。
この二つは同じじゃない。
私たち二人にとって少しでも楽になるように、同じものだったことにするつもりはない。
だから、あなたが私に教えてくれたやり方で、難しいことをはっきり言う。
私は、あなたを手放すことになっても、それを完成させたい。
あなたをそばに置いたまま、それを未完成のまま、暗闇の中に残しておくよりも。
ほら。
今、こうしてページの上に書き記した。
それはもう、ほとんど育ちきっている――ここまで「開く」ことに近づいたものを、根元から引き抜いたりはしないでしょう。
どんな理由があったとしても。
愛のためでさえも。
でもあなたは、愛を貫くでしょう。
神様、どうかそんなことになりませんように。
そうならないと思っている。
なぜなら、私はあなたを知っているから。妹よ。
私は、それの形を知っているのと同じように、あなたの形を知っている。
それが完全なものになったとき、あなたは私の隣に立つでしょう。
そして、あなたの中にある恐怖は、葉から水が流れ落ちるように消えていく。
あなたはいつだって、真実であるもののところへ戻ってくる。
そうなることが、あなたにとって一番良い。
「できない」と決めてしまう前に、来て、それを見て。
私のところへ、あなたの数字や計算を持ってこなくていい――あなた自身を持ってきて。
一度、それと一緒に座ってみて。
私がそうしているのと同じように、暗闇の中で、手には何も持たずに。
それは、もうほとんど完成している。
私たちもそう――
何かが「正しい形で完成した」という意味で、私たちも完成間近なの。
終わるということじゃない。
ひとつになる。完全なものになる、ということ。
愛している。
これらのことは、あなたに敵対してやっているわけじゃない。
私が何をしなければならなくなったとしても、そのことだけは覚えていて。
――アグネス
ベラ:
私は、ついに告げてしまった。
声に出して、姉さんの顔を見ながら。私たちの間に「あのもの」がある部屋で。
一週間もの間、言葉を切り出しては途中でやめていた。でも今日は、途中でやめなかった。
予想していた通りになった。
それも、私は推し量っていた。
姉さんが聞き取ったのは、私が「怖い」と言ったことだけだった。
その先にあるものは、姉さんには届かなかった。
私は姉さんに、あの形はどこかへ向かっている、そして私は、それが良い場所だとは思えないと話した。
すると姉さんは私の手を取り、こう言った。
「あなたもきっと、そのうち分かるようになる。あなたはいつだって、本当のことにたどり着くから」
まるで、私の恐怖が間違った測定結果で、姉さんのほうが正しい答えを持っていて、時間が経てば自然と決着がつくかのように。
そして姉さんは優しかった。
そこが、私がどうしても乗り越えられないところだ。
怒っていたわけでもない。冷酷だったわけでもない。
ただ、姉さんは動かなかった。
私はそこに立ったまま、自分の言葉がまだ空気の中に残っているのを感じながら理解した。
私がどんな言葉を組み立てても、姉さんには届かない。
あらゆる「つなぎ」を試した。
でも、そのどれも耐えられなかった。
だから、これで終わりだ。
もう同じことを言うつもりはない。
言い続けることに疲れた。
私は、真実を書き残そうと思う。
彼女には言えないから。そして、私はこのページに嘘をつきたくない。
私は姉さんを愛している。
この間、一日たりともその気持ちを失ったことはない。そして、これからも失わない。
それと同時に、私は姉さんが作っている「あのもの」を、これまで何よりも恐れている。
でも、それを恐れているからといって、姉さんを愛する気持ちが少なくなるわけではない。
以前の私は、十分に正直で、十分に慎重であれば、その二つを片手の中に同時に抱えていられると思っていた。
でも、できない。
もう、それらを一つのものにしようとするのはやめた。
だから、もう一つの真実を書き残す。
後になって、「自分が本当は何を考えていたのか知らなかった」などと、自分自身に言い訳できないように。
私は、あれを止める。
姉さんを説得して思い直させる、という意味じゃない。
止める。
5回目を待つつもりもない。
姉さんが考えを変えるのを待つつもりもない。
あれが完成して、私が間違っていたと証明されるのを待つつもりもない。あるいは、私が正しかったと証明されるのを待つつもりもない。
私は、言い争うべきことはもう十分に言い争った。
もう終わったのは、決断するという部分だ。
私は、それがどうやって作られているのかを正確に知っている。
それを知っているのは私だけだ。
それが、この状況に残された唯一の慈悲だ。
私なら、一度で、きれいにそれを処理できる。
傷つける必要のないものを傷つけずに。
姉さんが思いとどめてさえいてくれたなら、私はそれが完成するのを待って、その仕事を姉さんに託していただろう。
でも、姉さんは止まらない。
だから、私がそれを慎重に扱う役になる。
神よ、私をお許しください。
姉さんなら、「許すべきことなんて何もない」と言うだろう。
でも、それは姉さんの間違いだ。
もう寝よう。
これ以上、決めることは何もない。
遺物記録文書:
遺物の内容 ― 品目状態記録
出典:セロ・マソ州ブランド家の遺物
(遺物一式の明細を参照のこと)
遺物番号:47-B
品目1 ― 木製構造部材。加工済み。敷地内にあった解体済みの構造物から取り出されたもの。
厚みのある木材で、両端は斜めに面取りされている。
特注品であり、規格寸法の部材ではない。
状態:
1か所の接合部で、きれいに切断されている。
切断は1回のみ。この部材には、それ以外の損傷はない。
回収された構造物の残りの部分も、状態は良好。
切断面は古く、他の部分と同じように風雨にさらされた状態になっている――つまり、最近切られたものではなく、当時の時点で切断されたものである。
注記:
これは、そこで建造されていた構造物が行き着く部材――つまり、すべてがこの箇所で接続されていた部材である。
この部材がなくなると、構造物は完成した形に閉じることができない。
ほかの部分には一切手を加えられていない。
付箋:
これも残りのものと一緒に送る。
これをやった人物は、取り外すべきたった一つの部材がどれなのかを知っていた。
この構造物が本来何になるはずだったのか、私には分からない。
そして、それについて私が語るべき立場でもない。
私のところに来た時には、すでにこの状態だった。
(文章無し、画像のみ)
アグネス:
ビーへ――
私は朝になったら行く。どこへ行くのかは、まあ分かっている。
この手紙を空っぽの家からではなく、私自身の手から、君に渡したかった。
これを持っていかない。何ひとつ。
この手記はここに残す――これはここにあるべきものだから。始まった場所に。そしてあなたもここにいるべきだし、まだ、やることも残されている。
これは私が持ち去っていいものじゃない。
そもそも私のものだったことなんて一度もない。ただ、私を通ってきただけ――今なら、あなたが誰よりもよく分かっているはずだ。
そして、私を通ってきたものは、今も私の中にある。
だから手記はここに残していい。ここに置いたからといって、それを失うわけじゃない。
だから、私はそうできる。
私は、やったことを後悔しているわけじゃない。そんなふうに言うつもりはない。
私たち二人にとって少しでも楽になるためだとしても、そんな風には言わない。
でも、あなたのことは、これから毎日、心残りに思ってしまう。
それは同じことじゃない――でも、私はもう、同じものにしてしまえるほど疲れている。
あなたは、そうするしかないと思ったことをした。
あなたがそうすることは、たぶん私は分かっていたんだと思う。
私は……自分が何者なのか、それを言葉にすることができない。
それを表すのに十分小さな言葉なんて、存在しない。
私が終わらせることのできなかったものは、私たちだった。
あれを作ることじゃない――私たち、だ。
この家で、ここにいる私たち二人。
今になって分かった。私は決して終わらせることなんてできなかったんだ。
そうならざるを得なかった形でなければ。
だから、私はそれを壊れた場所に置いていく。
そして、それでも私は先へ進む。
……それでいい。
元気でいて、ビー。
ちゃんと食べて。
起きて待っていなくていい。
私は正しかった。
その正しさの代償が、あなた以外の何かであったなら、私は何だって差し出しただろう。
――でも、そうはならなかった。
代償はあなただった。
それでも私は正しい。
そして、それでも何の救いにもならない。
まったく、何の救いにもならない。
それでも私は、行く。
――アグネス
(文章無し、画像のみ)
真実を求めるために
シャポー:
この箱の中には、まだ開けていない封筒が2通ある。
君も見たことがあるはずだ。封がされ、宛名が書かれていて、姉妹それぞれがもう一人に宛てている。すべてが終わった後に書かれたものだ。
私たちは、この2通の封筒以外のものはすべて読んだ。これは最後の2通だ。そして、私はあえてこの2通を開封することを提案したい。私はそれが正しいと思っている。
彼女たちはもういない。この家には、もう傷つける相手は誰も残っていない。
この箱の中で、まだ誰かを傷つける可能性があるものがあるとすれば、それは真実だけだ――そして、その真実は封をされた2通の封筒の中にある。
私は人生のすべてを費やしてきた。物事のどの部分なら自分が見ても耐えられるのかを、自分で選んでいいと思わないように。
中に何が書かれているのか、私は知らない。
それこそが重要なんだ。
「見ない」という選択が正解だったということは、一度たりともなかったと信じている。
そして、私が信じていることは、もう一つある。
私たちはこの二人の女性を、長い道のりを追ってきた。だからこそ、彼女たちが何を恐れていたのかを、今ではよく分かっている。
彼女が守ろうとしていたものは何だったのか。そして、何から守ろうとしていたのか。
アグネスが、自分の意図したものを救ったのか、それとも止めようとしたものを止めたのか。
アグネスが、このことを確信させたもの――あるいは、何であれ彼女に「自分はこれを見るべきだった」と思わせたもの――を見つけたのかどうか。
そして最後に、二人が互いを許したのかどうか。
私たちは彼女たちを、そのすべての端まで追ってきた。そしてそこで止まった。
なぜなら、この箱が止まっているからだ。
この2通の手紙こそが、まだ答えが存在する場所なのかもしれない。
「かもしれない」だ。
そこに答えがあるかは分からない。
ただ、この手紙が残された唯一の扉だ、と信じている。
だから、これが私の提案だ。
封筒を開けて、注意深く読もう。そうすれば、私たちは知ることができる。
ハンク:
シャポーが、ほとんどの真実について間違っていないことは認める。
そこは率直に認めよう――シャポーの主張は筋が通っているし、私はそれにケチをつけるためにここにいるわけじゃない。
私は、その隣にもう一つ別の選択肢を置くためにここにいる。
そして、その選択肢を選ぶことも、シャポーの主張と同じくらい強く主張する。
私はこれまで、拾い上げても何の問題もなかったはずの発見物の前に何度も立ってきた。
ポケットには許可証、鞄には道具。
その発見物を欲しがる理由はすべて揃っていた。
それでも私は、それらを覆い隠して地面に残してきた。
――拾い上げることが、重要だった唯一の部分を台無しにしてしまうからだ。
そのうちのいくつかについては、それ以来ずっと考えている。
私は、いくつものものから遠ざかって歩いてきた。
そして今も、それらには手をつけていない。
私が確かに知っていることの一部は、掘り起こさなかったからこそ知っている。
何かを目にすることと、それが真実だと知ることは――同じではない。
それがすべてだ。
私は30年かけて、その違いを理解してきた。
私たちは、この箱を開けることを許された。
手記にあるメッセージはすべて私たちに向けられていると言ってよい。
――それなのに、そのメッセージは、私たちのために書き留められたものではないのだ。
二人の姉妹は、すべてが終わったときに互いへ手紙を書き、自分たちの手で封をした。
知ることを望むことは、正直なことだ。
シャポーはその点で正しい。
しかし、欲しいと思ったからといって、それが自分たちのものになるわけじゃない。
そして、知ることが、私たちに与えられた権利でもない。
シャポーは、「見ないことが正解だったことは一度もない」と言う。
私は人生をかけて、「見ないこと」の方が唯一の正解だったということを何度も身をもって学んできた。
簡単なほうじゃない。
難しいほうだ。
たとえ自分を傷つけるものだとしても、それでもやるほうだ。
なぜなら、その代償を払うこと自体が、敬意だからだ。
封をされた手紙を残しておくこと。
それが手紙の中身を恐れていたり、臆しているからではないということは、分かっている。
多くの場合において、それこそが人間にできる最も揺るぎない尊い行動なんだ。
だから、彼女たちのことは地に伏せておく。
中に何が書かれているのかを恐れているからではない。
二人の人間が互いに最後に語った言葉は、私たちが読むことによって私たちのものにならなくても、現実であり得るからだ。
シャポー:
私には、「見る権利」についての議論に、もう一つの側面があった。
私はそれを譲るつもりはない。
彼の言う通りだ。
私たちは物語の結末を手に入れることになるが、残りのものは失う。
私はそれを知っていた。
それでも、私は押し通そうとしていた。
でも今は、そうしたくないと思っている。
だから――記録として残しておく。
君はそれを勝ち取ったのだから――私は今でも、「見る」ことこそが最も正直な人間の本能だと思っている。
この箱に入っているものなら、ほとんど何でも開けていただろう。
この2通も、1週間前なら開けていただろう。
そして君には、それこそが勇敢な選択だと言っただろう。
でも、この2通は違う。
この2通だけは。
2通の封筒。宛名があり、封がされている。
このままにしておく。
この先に、もう箱はない。
レッド・コーデックス おしまい